top of page

スーパーチームに共通する「戦略的余裕」とは 〜組織の集中力が、付加価値を生み出す〜

  • 8月8日
  • 読了時間: 5分

「最近、一日中忙しいのに、肝心な仕事が全然進まない。」


多くの経営者や管理職から、そんな声を聞くようになりました。


オンライン会議、メール、チャット、資料作成、社内調整……


DXが進み、コミュニケーションツールも充実したはずなのに、私たちは以前よりも「仕事をしている感覚」は増えた一方で、「価値を生み出す時間」は減っているのではないでしょうか。


スーパーチームの集中力とは


『Superteams』の著者で組織行動研究者のRon Friedman氏は、6,000人以上のナレッジワーカーを調査し、高い成果を上げる「スーパーチーム」と平均的なチームを比較しました。その結果は興味深いものでした。


通知をオフにする、メールをまとめて処理する、ヘッドホンを着けるなど、多くの人が実践している「個人の生産性向上策」は、個人には効果があっても、チーム全体の成果にはほとんど結び付いていなかったのです。


一方で、高い成果を上げるチームには共通点がありました。彼らは「集中力」を個人任せにせず、組織全体で守る仕組みを作っていたのです。


これは、日本企業にとっても非常に示唆に富むメッセージです。


日本企業が抱える「集中できない組織」の課題


日本企業では、「すぐ返信する」「会議には全員参加する」「丁寧に根回しする」といった文化が、美徳として根付いています。


もちろん、これらは信頼関係を築くうえで重要な価値観です。


しかし、それが過度になると、社員は一日中誰かに反応し続け、本当に考えるべき仕事に集中できなくなります。


「忙しい人」が評価され、「余裕のある人」が暇だと思われる文化では、新しいアイデアやイノベーションは生まれにくくなります。


生産性ガーデンが考える「戦略的余裕」


生産性向上の重要な要素の一つは、付加価値を生み出すための「戦略的余裕」をつくることです。


ここでいう戦略的余裕とは、単に時間的な余裕ではありません。


日々の会議やメール、チャットへの対応に追われるのではなく、組織として本当に集中すべきことを見極めるための余白です。


組織の時間も、注意力も、経営資源も有限です。


だからこそ、何に集中し、何を手放すか。その選択が、組織の生産性を決めます。


戦略的余裕がある組織は、

  • 「木」ではなく「森」を俯瞰し、本質的な変化や機会を捉えられる。

  • 日々の改善だけでなく、未来の付加価値につながるイノベーションを生み出せる。

  • 短期的な課題に追われず、長期的な企業価値を見据えた意思決定ができる。


つまり、戦略的余裕とは、何もしない時間ではありません。


組織が「反応する」ことから「創造する」ことへシフトするための経営姿勢なのです。


高業績チームが実践している3つの仕組み


Ron Friedman氏の研究では、高い成果を上げるチームには共通した実践がありました。


1. 「集中時間」を組織として守る

高業績チームでは、会議もチャットも入れない時間をあらかじめスケジュールに組み込んでいます。


企業でも、例えば毎週水曜日と金曜日の午前中を「Focus Time」とし、社内会議やチャットを原則控えるだけでも、大きな効果が期待できます。


2. 「会議のない日」をつくる

MIT Sloan Management Reviewで紹介された調査では、週2日の「会議なしデー」を導入した企業で、生産性や満足度が向上し、ストレスが減少しました。


日本では難しいと感じる企業も多いかもしれませんが、まずは月1回でも構いません。

重要なのは、「会議を減らすこと」ではなく、「考える時間を確保すること」です。


3. 「聞かなくても分かる仕組み」を整える

高業績チームは、情報共有を個人に依存しません。


業務手順やナレッジを文書化し、タスク管理ツールを活用し、「誰が・何を・いつまでに行うか」を可視化しています。AIも、この領域で大きな力を発揮します。


会議の議事録作成、情報検索、資料の要約などをAIに任せることで、人は「考える仕事」に時間を使えるようになります。


高業績チームのレジリエンス


筆者自身、長年外資系金融機関でリスク管理に携わる中で、高業績チームにはもう一つ共通した特徴があることを実感してきました。それは、高いレジリエンス(組織のしなやかさ・回復力)です。


高業績チームでは、情報やノウハウを特定の個人に依存せず、チーム全体で共有することが徹底されているだけではなく、重要な業務も一人に依存することなく、誰かが不在でも業務が滞らないよう設計・運用されています。


その背景には、「チーム全員が毎年2週間の連続休暇を取得すること」を前提とした組織設計があります。


休暇は福利厚生の領域に留まらず、組織の健全性を確認するための仕組みでもあります。


そのため、日頃から重要業務を棚卸しし、クロストレーニングを通じて互いに業務をカバーできる体制を整えています。こうした取り組みが、チームの柔軟性とレジリエンスを高めています。


チーム全員が安心して2週間の休暇を取得できる組織こそ、「戦略的余裕」を備えた組織だと考えています。


変化や予期せぬ事態にも対応しながら、常に活気と適応力を維持し、未来への挑戦を続けられる組織能力そのものなのです。


経営者が最初に変えるべきもの


組織文化は、制度よりも経営者の行動から変わります。


Ron Friedman氏の調査でも、高業績チームではリーダー自身が率先して集中時間を確保していました。


「考える時間を大切にする上司」の姿勢が、組織全体に新しい働き方を根付かせます。


生産性とは、「美しく働くこと」


AIが仕事を代替する時代だからこそ、人にしかできない価値は、「考えること」「創ること」「人とつながること」にあります。


そのためには、忙しさを競うのではなく、価値を生み出す余裕を組織全体で育てることが必要です。


「美しく働くこと」が、結果として企業の付加価値とウェルビーイングを高める。


そんな組織を、一社でも多く日本に増やしていきたいと考えています。



参考文献

Ron Friedman, Superteams: The Science of Extraordinary Teams, W. W. Norton & Company, 2024.

 
 
 

コメント


bottom of page