スーパーチームに共通する「戦略的余裕」とは 〜組織の集中力が、付加価値を生み出す〜
- 8月8日
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「最近、一日中忙しいのに、肝心な仕事が全然進まない。」
多くの経営者や管理職から、そんな声を聞くようになりました。
オンライン会議、メール、チャット、資料作成、社内調整……
DXが進み、コミュニケーションツールも充実したはずなのに、私たちは以前よりも「仕事をしている感覚」は増えた一方で、「価値を生み出す時間」は減っているのではないでしょうか。
スーパーチームの集中力とは
『Superteams』の著者で組織行動研究者のRon Friedman氏は、6,000人以上のナレッジワーカーを調査し、高い成果を上げる「スーパーチーム」と平均的なチームを比較しました。その結果は興味深いものでした。
通知をオフにする、メールをまとめて処理する、ヘッドホンを着けるなど、多くの人が実践している「個人の生産性向上策」は、個人には効果があっても、チーム全体の成果にはほとんど結び付いていなかったのです。
一方で、高い成果を上げるチームには共通点がありました。彼らは「集中力」を個人任せにせず、組織全体で守る仕組みを作っていたのです。
これは、日本企業にとっても非常に示唆に富むメッセージです。
日本企業が抱える「集中できない組織」の課題
日本企業では、「すぐ返信する」「会議には全員参加する」「丁寧に根回しする」といった文化が、美徳として根付いています。
もちろん、これらは信頼関係を築くうえで重要な価値観です。
しかし、それが過度になると、社員は一日中誰かに反応し続け、本当に考えるべき仕事に集中できなくなります。
「忙しい人」が評価され、「余裕のある人」が暇だと思われる文化では、新しいアイデアやイノベーションは生まれにくくなります。
生産性ガーデンが考える「戦略的余裕」
生産性向上の重要な要素の一つは、付加価値を生み出すための「戦略的余裕」をつくることです。
ここでいう戦略的余裕とは、単に時間的な余裕ではありません。
日々の会議やメール、チャットへの対応に追われるのではなく、組織として本当に集中すべきことを見極めるための余白です。
組織の時間も、注意力も、経営資源も有限です。
だからこそ、何に集中し、何を手放すか。その選択が、組織の生産性を決めます。
戦略的余裕がある組織は、
「木」ではなく「森」を俯瞰し、本質的な変化や機会を捉えられる。
日々の改善だけでなく、未来の付加価値につながるイノベーションを生み出せる。
短期的な課題に追われず、長期的な企業価値を見据えた意思決定ができる。
つまり、戦略的余裕とは、何もしない時間ではありません。
組織が「反応する」ことから「創造する」ことへシフトするための経営姿勢なのです。
高業績チームが実践している3つの仕組み
Ron Friedman氏の研究では、高い成果を上げるチームには共通した実践がありました。
1. 「集中時間」を組織として守る
高業績チームでは、会議もチャットも入れない時間をあらかじめスケジュールに組み込んでいます。
企業でも、例えば毎週水曜日と金曜日の午前中を「Focus Time」とし、社内会議やチャットを原則控えるだけでも、大きな効果が期待できます。
2. 「会議のない日」をつくる
MIT Sloan Management Reviewで紹介された調査では、週2日の「会議なしデー」を導入した企業で、生産性や満足度が向上し、ストレスが減少しました。
日本では難しいと感じる企業も多いかもしれませんが、まずは月1回でも構いません。
重要なのは、「会議を減らすこと」ではなく、「考える時間を確保すること」です。
3. 「聞かなくても分かる仕組み」を整える
高業績チームは、情報共有を個人に依存しません。
業務手順やナレッジを文書化し、タスク管理ツールを活用し、「誰が・何を・いつまでに行うか」を可視化しています。AIも、この領域で大きな力を発揮します。
会議の議事録作成、情報検索、資料の要約などをAIに任せることで、人は「考える仕事」に時間を使えるようになります。
高業績チームのレジリエンス
筆者自身、長年外資系金融機関でリスク管理に携わる中で、高業績チームにはもう一つ共通した特徴があることを実感してきました。それは、高いレジリエンス(組織のしなやかさ・回復力)です。
高業績チームでは、情報やノウハウを特定の個人に依存せず、チーム全体で共有することが徹底されているだけではなく、重要な業務も一人に依存することなく、誰かが不在でも業務が滞らないよう設計・運用されています。
その背景には、「チーム全員が毎年2週間の連続休暇を取得すること」を前提とした組織設計があります。
休暇は福利厚生の領域に留まらず、組織の健全性を確認するための仕組みでもあります。
そのため、日頃から重要業務を棚卸しし、クロストレーニングを通じて互いに業務をカバーできる体制を整えています。こうした取り組みが、チームの柔軟性とレジリエンスを高めています。
チーム全員が安心して2週間の休暇を取得できる組織こそ、「戦略的余裕」を備えた組織だと考えています。
変化や予期せぬ事態にも対応しながら、常に活気と適応力を維持し、未来への挑戦を続けられる組織能力そのものなのです。
経営者が最初に変えるべきもの
組織文化は、制度よりも経営者の行動から変わります。
Ron Friedman氏の調査でも、高業績チームではリーダー自身が率先して集中時間を確保していました。
「考える時間を大切にする上司」の姿勢が、組織全体に新しい働き方を根付かせます。
生産性とは、「美しく働くこと」
AIが仕事を代替する時代だからこそ、人にしかできない価値は、「考えること」「創ること」「人とつながること」にあります。
そのためには、忙しさを競うのではなく、価値を生み出す余裕を組織全体で育てることが必要です。
「美しく働くこと」が、結果として企業の付加価値とウェルビーイングを高める。
そんな組織を、一社でも多く日本に増やしていきたいと考えています。
参考文献
Ron Friedman, Superteams: The Science of Extraordinary Teams, W. W. Norton & Company, 2024.




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