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料理は、心を整える習慣になる

  • 執筆者の写真: 李 群 ( Qun Li )
    李 群 ( Qun Li )
  • 2025年5月23日
  • 読了時間: 5分

更新日:2025年5月27日

~忙しい時代をしなやかに生きるための”静かな処方箋”~

ストレス、不安、孤独感。

私たちが日々直面する心のざわつきは、目に見えないからこそ厄介です。


そんな時代にあって、「料理する」「食卓を囲む」というごく当たり前の営みが、実は私たちの心と体を整える力を持っていることが、あらためて注目されています。


料理は、ただ食事を用意するための作業ではありません。


自分の手で素材に触れ、香りを感じ、味を整えるという一連のプロセスは、心に静けさと自信、そしてつながりをもたらす行為でもあるのです。


1.集中と癒しが同時に訪れる、”フロー”の時間

キッチンに立つと、五感が自然と目覚めます。

キャベツを刻む音、煮物の立ちのぼる湯気、包丁の感触包丁のリズム、食材の手ざわり、ぐつぐつと煮える音、広がる香り。

五感を使って料理に没頭していると、気づけば心がふっと落ち着いていることがあります。

こうした感覚に意識を向けていると、やがて余計な雑念が遠のき、今この瞬間に没入している自分に気づくはずです。


この「集中しながらもリラックスしている状態」は、心理学で“フロー”と呼ばれるもので、ストレスを緩和し、自己肯定感や満足感を高めてくれる状態です。

創造性や幸福感を高めることがわかっています。


アートや音楽と同じように、**料理もまた、心のメンテナンスになる“日常の創作活動”**だといえるでしょう。


特に、仕事や育児、介護などに追われてきた30〜40代以降の世代にとって、誰にも邪魔されず、静かに手を動かせる時間はかけがえのない“ひとりの時間”。


大きな成果はなくても、日々の中で静けさを取り戻す行為として、料理は理想的な手段です。


特にコロナ禍では、「家で料理をする時間が心のバランスを保ってくれた」という声が多く聞かれました。

難しすぎず、単調すぎない作業に取り組むことで、私たちは日々のざわめきから距離をとることができるのです。


2. 自分の手で整える、自信と自己効力感

料理には、「自分の力で何かを整える」感覚があります。

何を食べるかを決め、どう味つけをするかを選ぶ。


そんな小さな選択と実行の積み重ねが、私たちに自律性達成感を育ててくれます。


たとえば、体調を崩した日でも、おかゆを一杯、自分で作れたことで「私はちゃんと自分を支えられている」と感じられるかもしれません。

あるいは、節約のために買っておいた食材を最後まで無駄なく使い切ったときの満足感も、生活の知恵と手応えをくれるものです。


そして忘れてはいけないのが、料理が得意でなくても、効果は変わらないということ。


レトルトを温めるだけ、卵を焼くだけでも、自分で選び、手を動かしたという事実に変わりはありません。

完璧に作る必要はありません。

焦がしてしまっても、味が薄くても、切り方が不揃いでもかまいません。

自分の手で「何かを整える」ことそのものが、心に作用する大事なプロセスなのです。


苦手でも、少しだけやってみる。

その“できた”の積み重ねが、自信につながっていきます。


「やってみた」経験の積み重ねが、自信になります。

自分で自分をケアできるという感覚は、どんな年齢の人にも心の芯を支える力になるのです。


3.「誰かと食べる」ことが生む、ささやかなつながり

食卓には、言葉以上のコミュニケーションがあります。

「おいしいね」と言い合うだけで、心がほどける。


一緒に食べる相手がいれば、食事の時間は“作業”ではなく、つながりを感じるひとときになります。


料理を囲む時間には、人と人との距離を近づける力があります。

家族、友人、パートナー――同じ食卓に並ぶだけで、言葉以上の安心感が生まれることがあります。

孤食が当たり前になりがちな現代、特に中高年世代では、配偶者の不在や子どもの独立によって、食卓の風景ががらりと変わることがあります。


そんな中でも、誰かと時間を共有することは、精神的な栄養補給にもなります。


現代社会では孤食が問題視されていますが、たとえ月に1回でも、誰かと食事をすることで、孤独感や不安がやわらぐという調査結果もあります。

最近は、離れて暮らす家族や友人と、オンラインで食卓をつなぐ“リモートごはん”も広がりを見せています。

「いただきます」「美味しいね」――その一言の共有が、心を温めてくれるのです。

近所の友人と月1回の“持ち寄りランチ”をする。

離れて暮らす子どもと「同じメニューを作って、ビデオ通話で一緒に食べる」なんて工夫も、新しい形の食卓の楽しみ方です。


一緒に食べることで、人生の孤立感は確実にやわらぎます。


つながるための手段として、料理と食事の力をもっと信じていいのです。


4.ジェンダーを超えて、“料理すること”の価値を見直す

長年「料理は女性の役割」とされてきた日本の文化。

でも、時代が変わり、ライフスタイルも多様化した今、料理は誰にとっても“暮らしの技術”です。


男女問わず、料理を身につけることは、自分自身をケアする力を持つことでもあります。


特に男性にとって、退職や子どもの独立などで生活環境が変わる50代・60代は、暮らしのバランスを立て直すタイミング。

この時期に「自分の食事を整える」習慣を持てるかどうかが、その後の心身の健康に大きな影響を与えます。

最初はインスタントラーメンや炒め物からでも構いません。

料理に上手・下手は関係ありません。


誰にとっても「生活を楽しむための選択肢」であることが大切なのです。


一皿の向こうにある、人生の滋養

料理は、ただの家事でも義務でもありません。


それは、自分自身と静かに向き合い、誰かとのつながりを育む行為です。


きれいに盛りつけた一皿も、残りもので作ったささやかなスープも、そのひとつひとつに「整えたい」「満たしたい」という気持ちが込められています。

特別な技術や時間はなくていい。


自分のために、誰かのために、少し手を動かすこと。


そこから、ウェルビーイングは始まります。

今日の自分をちょっとだけいたわるように、小さな一皿を、ていねいにつくってみませんか?

 
 
 

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